BLUE GIANT(ブルージャイアント)9巻レビュー 過去に決着をつけ、物語は終章に向けて加速する

いよいよラスト2巻。

今回は最終章に向けて物語が加速する9巻のレビュー。

8巻のレビューはコチラ↓

BLUE GIANT(ブルージャイアント)8巻レビュー 若者の輝きは時代の敗者にもう一度夢を見せる
今回は8巻のレビュー。 残り3巻なんて悲しすぎるけど、『岳』もこの『BLUE GIANT』も石塚真一の漫画の良さは無理にストーリーを延ばそうとしていないところだと思う。 そういう意味では10巻という長さは妥当だし、僕も「

『BLUE GIANT』9巻レビュー(ネタバレ含む)

9巻は『ジャス』のメンバーが『カツシカJazz Festival』に出演するとこ炉からスタートする。

このフェスティバルの中で『ジャス』は人気ジャズバンド『Act』の前座という位置付けで出演するが、見事主役を喰うようなパフォーマンスを見せる。

その後、『ジャス』はライブの動員数もファンも増やし、一つの到達点へと近づく。

その中で語られるのが、雪祈と大の過去との決着だ。

救われる雪祈

5巻では雪祈の実家は長野県の松本市でピアノ教室をやっていることが語られる。

かつてその教室に1人の女の子が通っていた。幼い頃の雪祈は彼女がピアノを弾くのを見て音楽の楽しさを知った。

でも、彼女は突然引越しをしなければならなくなり(おそらく夜逃げ等の家庭の複雑な事情)、ピアノ教室を辞めてしまう。雪祈の母は彼女に「ピアノ続けてね」という言葉をかけたが、それはピアノがもう続けられないと分かっているからこそかけた言葉だった。

彼女がピアノを続けられないだろうということは幼い雪祈にもなんとなく分かった。

そして、雪祈は「音楽をやれているのが幸せだとしても、それは勝っている間だけだ」と考えるようになる。

音楽で幸せを感じるためには、音楽を続ける必要があり、音楽を続けるためには勝ち続けなければいけないというのが彼の考えなのだ。

5巻ではその女の子がどうなったかはわからないが、9巻で彼女は『アオイ』という名前を持って物語に再登場する。

『ジャス』のライブに観客として現れたのだ。

そして、アオイは音楽を続けていた。

そんな彼女の前に雪祈は「音楽やってて良かったです…音楽やってくれてて良かったです…」と涙を流す。

この場面は、「勝ち続けなければ音楽で幸せは感じられない」というかつての雪祈の考え方が「音楽で得られる幸せがあれば勝ち続けることができる」というものに変わった瞬間ではないだろうか。

これは、平に演奏を酷評され、苦しんだ雪祈だからこそ辿り着けた答えだろう。

大の失恋

大には高校生時代に友達以上恋人未満の相手・三輪がいた。

ある日彼女が突然東京に現れる。

そして、アルバイト先に好きな人ができたことを告白し、1年間ほとんど連絡をよこさなかった大に別れを告げる。

1年間三輪は何を考えていたのだろう。おそらく彼女は大に好意を寄せていたはずだし、アルバイト先の友人から告白された時も大に相談をしたかったのかもしれない。

2人のどちらかがもう少し連絡を取っていれば、2人の関係性はこの結末とはもっと違ったものになったはずだ。

でも、大も連絡をしなかったし、三輪から連絡することもなかった。

大はジャズに没頭し、三輪はそんな状況を察して連絡することが憚られたのではないのだろうか。「大の中に自分がいてはいけない。彼が音楽と真剣に向き合う邪魔になってはいけない」と思ったのではないだろうか。

僕には、三輪は大に別れを告げるのではなく、三輪自身の心の中にいる大に別れを告げるために上京したように思えてならなかった。

最高のチームになる『ジャス』

過去に決着を着けた雪祈と大。

そして、『ジャス』は最強のチームになりつつあった。

『ジャス』というバンドのチーム化については、6巻のレビューで書いた通りだ。

良いチームになるには必ず次の3つが必要だ。

  1. 共通の目的があること(ビジョンやベクトルの共有)
  2. 役割分担の明確化
  3. メンバー間の人間関係の強化

これまでの巻では、主に2と3を中心に『ジャス』が1つのチームとなっていく様子が描かれていたが、9巻で明示されるのは3だ。

今までは雪祈だけが口にしていた「SO BLUEのステージに立つ」という夢が初めて大の口からも語られるのだ。

ここで彼らはただのチームからチームに必要な3要素を全てもつ『最強のチーム』になる。

そして、物語は終章へと向かっていく。

10巻(最終巻)のレビューはコチラ↓

BLUE GIANT(ブルージャイアント)10巻レビュー 残酷な物語の中に示されるかすかな希望
最終巻のレビュー。 僕がこの『BLUE GIANT』のレビューをブログで書き始めたのは2巻くらいまでを読んだ頃だった。 そこまで読んだだけで「この漫画を読んだ感想を記録に残しておきたい」と思い、レビューを始めた。

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