BLUE GIANT(ブルージャイアント)8巻レビュー 若者の輝きは時代の敗者にもう一度夢を見せる

今回は8巻のレビュー。

残り3巻なんて悲しすぎるけど、『岳』もこの『BLUE GIANT』も石塚真一の漫画の良さは無理にストーリーを延ばそうとしていないところだと思う。

そういう意味では10巻という長さは妥当だし、僕も「このくらい長さだったらすぐ読めそう」という感覚で手に取り、この素晴らしい漫画に出会えたのだ。

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『BLUE GIANT』8巻レビュー(ネタバレ含む)

8巻は6〜7巻と同じようなテーマを持って物語が展開されているように思えた。

それは『ジャス』というチームの成長だ。

彼らは挫折や変化、様々な出会いを通して成長していく。そして、その成長は他のキャラクターやサイドストーリーとの対比によって、より一層魅力的なものへと昇華される。

7巻のレビュー時には『ザ・ファイブ』という脇役に注目したが、8巻のレビューでも同じように脇役にスポットを当てたいと思う。

僕はきっと石塚真一が描く脇役が好きなのだ。

平の言葉は誰に向けられたものだったのか

まずは雪祈がいつかそのステージに立つことを夢見る『SO BLUE』の支配人・平だ。

彼は7巻の終わりで『ジャス』のステージを見に来るが、玉田のドラムには好感を抱き、大の将来には大きな興味を示した。

でも、雪祈のピアノに対しては「面白くない。何一つ面白くない演奏。君のピアノはつまらない」と酷評する。

そして、「内臓をひっくり返すくらい自分をさらけ出すのがソロだろ。君はソロができないのか?」と雪祈を煽る。

8巻では、そんな平の『SO BLUE』での仕事振りが描かれる。

『SO BLUE』には海外の様々な有名ジャズプレーヤーがステージ立つ。

でも、彼らに昔の輝きはない。

平はそんな彼らに対して来日時のお気に入りの寿司屋をブッキングしたり、感想を聞かれて「It was legendary(伝説的なプレーでした)」と嘯く。

ジャズを愛し、その魅力の何たるかを誰よりも熟知しながら、ジャズを裏切るような仕事振りをする平の姿が描かれるのだ。

「内臓をひっくり返す」くらいの気概でジャズに向き合えていないのは平だ。

平が7巻で雪祈を煽った言葉は、平自身にそのまま向けられるべきだったものだったということに気付かされるのだ。

ジャズを信じる者・信じたい者

もう一人の注目すべき脇役として挙げたいのがジャズバー『TAKE TWO』のママ・アキコだ。

『TAKE TWO』は大が上京して初めて訪れたジャズを聞ける店であり、ママのアキコは大と雪祈の出会いのきっかけを作った人物でもある(アキコの紹介で訪れた店で大は雪祈と運命の出会いを果たす)。

また、『TAKE TWO』は『ジャス』のメンバーの練習場所でもある。

8巻ではそんなアキコがかつてジャズシンガーだったことが明らかにされる。

彼女と旧友とのお茶の場面。

かつての旧友の中には孫ができた者もいる。

アキコは昔こそジャズシンガーとして「このままどんどん有名になって、私達の知らない遠い世界の人になるんだなあって」思われていたが、今では「近くのバーのオバさんになっちゃった」と語られる。

孫ができ、幸せな家庭を築いた旧友に比べてアキコは負け犬として描かれるのだ。

友人の一人が彼女に言った「例えばだけど、もし今、若い子がアッコのところに来て、ジャズをやr痛いって言ったとしたら、アナタ『ジャズをやれ』ってススめる?ススめられるの?」という言葉がある。

これは「あなたは自分の人生に負けたのに、同じ道をまた若者に勧められるの?」という意味に捉えられるだろう。

友人の「若い人にジャズをススめられるのか?」という問いへのアキコの答え。

それは「もちろん」だ。

7巻で描かれた『ザ・ファイブ』とは異なり、彼女はまだジャズを信じているのだ。

いや、信じているのでない。

信じたいのだ。

彼女が信じてきたものが正しかったかどうかがわかるのはまだもう少し先の話だ。

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