BLUE GIANT(ブルージャイアント)7巻レビュー 夢の終わりを見誤った男達の悲哀

今回は7巻レビュー。

「あと残り4巻かあ…」と少し寂しくなりながら読み始めた巻だった。

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『BLUE GIANT』7巻レビュー(ネタバレ含む)

当たり前のことだけれど、良い漫画との要素は良い物語性と良いキャラクターによって構築される。

『岳』でもそうだったけれどど、石塚真一は本当にキャラクターを丁寧に描く。特に脇役の描き方がうまい。

脇役が上手に描かれているからこそ、メインストーリーに深みが生まれる。メインキャラクターの魅力も引き立てられる。勿論脇役のストーリー(サイドストーリー)も楽しむことができる。

7巻のレビューでは大、雪祈、玉田という『ジャス』のメインキャラクターからは離れて、『ザ・ファイブ』というバンドに注目してみたい。

くすぶり続けるバンド『ザ・ファイブ』

『ザ・ファイブ』は結成10周年を迎えるベテランジャズバンドだ。前年にメンバーが1人脱退して4人になるも、バンド名は変更せずにそのまま活動を続けている。

『ザ・ファイブ』は決して売れているバンドではないし、有名なバンドでもない。売れてないし、有名でもないけど、知る人ぞ知る良いバンドというわけでもない。

メンバーはバイトをしながらバンドを続けてはいるが、このままの状態で良いのかということにそれぞれが疑問を抱いているようだ。

かつてはCDをリリースしたこともあるが、今ではレコード会社に音源を持ち込んでも、年齢を理由に門前払いをされてしまう。

出会いバーの狭いステージの上で、ジャズなんて全く知らない客に対して演奏することもある。

そんな状況でもリーダーの森は「ギャラが減ろうが今日みたいな日があろうが、10年やり続けてきたのを知ってるのはオレ達しかいねぇ。そこは……やり続けたきことは、誇りにしてもいいんじゃねえの?」と口にする。

夢の終わりを見誤った男達の悲哀

この『ザ・ファイブ』に対して僕が感じたのは2つだ。

まず1つ目は「こういうバンド日本にいっぱいありそうだなー」ということだ。

「こういうバンド」とは何かというと「やめ時を見誤ったバンド」のことだ。彼らは7年前にCDもリリースしているし、過去にはそれなりの人気を誇るバンドだったようだ。でも、残念ながら彼らに明るい未来(バンドとしての成功)が訪れることはもうない。

でも、かつては彼らにも明るい未来や夢が見えていたのだ。

見えていたからこそ、バンドを10年間も続けてきたし、逆に言えば、10年間やめられなかったのだろう。

彼らは夢が終わっていることに気づくことができなかった。もしくは、気づいてはいながらも、そのことを直視できなかったのだ。

メンバーの1人が脱退したメンバーに対して「アイツが抜けたのは正しいタイミングだったんだな…」と語る場面が印象的だ。

才能とは何か

そんな『ザ・ファイブ』のメンバーだが、ジャズギタリストの川喜田に紹介されて『ジャス』のライブを観に行くことになる。

*「損はさせないから観に行け」と川喜田は一見『ザ・ファイブ』のメンバーのために『ジャス』を紹介したように描かれていたが、僕は川喜田は彼らに『ジャス』を観せることで音楽を諦めさせようとしているのではないかと思えた。

『ジャス』と『ザ・ファイブ』のメンバーはライブの後一緒に酒を飲みに行く。

その場で雪祈は「森さん達って全員、才能ないんじゃないすか?」というストレートな言葉をぶつける。

その言葉に対して「才能ってなんだよ?」と言葉を返す森だったが、雪祈は「才能が何か分かっていない。それが才能がない証拠すよ」とさらにキツい言葉返す。

この場面では『才能』について語られてはいるが、結局じゃあそれが何なのかということは明言されていない。

僕が考える才能は次の4つだ。

  1. 信じ抜けること
  2. 努力を続けること
  3. 激しい情熱があること
  4. 生まれ持って他よりも優れていること

『ザ・ファイブ』はずっとバンドを続けてきたという点では才能があったのだろう。情熱もそれなりに持っていたのだろう。

でも、残念ながら生まれ持って他よりも優れていることはなかった。

そして、何よりも大きいのは信じ抜くことができなかったという点だ。

物語の中でジャズの才能がある人物として描かれるのは、大と雪祈だろう。彼らは間違いなく音楽を、ジャズを、自分を信じている。売れなくても、評価されなくても、この2人は一生ジャズを続けて行くだろう。

でも、『ザ・ファイブ』のメンバーは結局誰一人ジャズを信じられなかったのだ。

飲み会の場で大は言う。

「今までたくさんのプレーヤーがいたけど、きっと…ゴールについた人間は誰もいないんすよ、ゴールがない世界でずっとやり続けられるなんて、最高に幸せじゃないすか」

この言葉に『ザ・ファイブ』のリーダー・森は目にうっすらと涙を浮かべる。

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