BLUE GIANT(ブルージャイアント)2巻レビュー 物語と主人公に重層的な魅力を与えるサイドストーリー

1巻のレビューに引き続き、2巻のレビューをしていく。

1巻のレビューはコチラ↓

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『BLUE GIANT』2巻レビュー(ネタバレ含む)

2巻では、主人公大の三澤舞(同じ高校の水泳部の長身女子)への恋心、彼のサックスの師匠となる由井との出会いや練習の日々などが描かれる。

でも、2巻の中で個人的に好きなのは、大をめぐる周囲の登場人物とのサイドストーリーだ。こういったサイドストーリーが物語と主人公に重層的に魅力を与えている。

ガソリンスタンドと震災

まずは大がバイトをするガソリンスタンドの所長とのサイドストーリー。

セルフ化の波により、スタンドは閉店となり、大もバイトをクビになってしまう。所長は彼を釣りに連れていった時に申し訳なさそのことを伝える。

その際、大が初めてガソリンスタンドのバイトに来た時のことが語られる。

雪が吹きすさぶ中、スタンドには車の長蛇の列。

けれど、給油できるガソリンの量は限られているようで、大は全ての車に対して、ガソリンは1,000円分しか入れられないことをお詫びしていく。

中には「気仙沼まで行って妹の安否を確かめなければいけない」と語気を荒げる客もいたが、必死に頭を下げる大の前に、諦めたような表情を浮かべる。

ここでは、物語が東日本大震災の後の世界を舞台として描かれていることと、初めてのバイトで自分に非があるわけでもないのに必死に頭を下げられる大という登場人物のひたむきさが表現されている。

*ちなみに1巻でも大の友人の周平が医者を目指すきっかけが震災であったことをほのめかす場面がある。もしかしたら、『BLUE GIANT』という漫画、そして大という主人公の夢の実現に向けたアホみたいな前向きさは『震災からの復興』という裏テーマを持っているのかもしれない。

家族を背負う兄と兄の想いを背負う大

大は3人兄弟の次男だ。兄と妹がいる。

10歳の頃に母を亡くしており、2巻の最終話ではその時のことが語られる。

母の死から5年後、兄の雅之は高校卒業後に就職し、工場で働いている。

初任給が出た日、雅之はファミレスに大と妹の彩花を連れていき、食事をご馳走する。どうやら父の収入だけでは満足のいく生活ができず、雅之も陰で弟妹の生活を支えているようだ。

そして、大のテナーサックスも雅之から送られたものだということが明かされる。

51万6,000円を36回ローン。

母が亡くなった時、泣きじゃくる大に対して「オレら…ゼッテー大丈夫だかんな」と唇を噛む雅之の描写があったところを見ると、「母がいなくても弟妹には苦労はさせない」「弟妹の夢は自分が実現させる」というのが兄の強いモチベーションになっているのだろう。

最後、練習でボロボロになったサックスを見た雅之の満足げな顔で2巻は終わり、3巻へと続いていく。

3巻のレビューはコチラ↓

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